気まぐれな君も好きだから
答えを出すのが怖くて、どうしたらいいのかわからない。

わからないから苦しくて、苦しいからまた遥希に甘える。

そして結局、この行き場のない苛立ちを、全部受け止めてもらうことになる。



いくら泣きついても甘えても、遥希はきっと優しく抱きしめてくれるだろう。

遥希にはそんな温かい包容力を感じる。

それだけでも十分なのに、支えたいとか、慰めたいとか、守りたいとか.........

そんなこと言われて、何も思わずにいられる訳がない。

今の数分間だけで、遥希を思う気持ちは、前よりも大きく大きく膨れ上がったように思う。



観覧車から降りた後、遥希は何事もなかったように、普通に接してくれた。

ベタベタくっついて、ニコニコして楽しそうで、見ているだけで心が和む。



「ネットで調べたらさ、隣のホテルのディナービュッフェ、夜景も見えるし、豪華で良い感じだったから、後で行かない?」

「いいね。素敵そう。」

「じゃ、行こ。で、その後、また観覧車乗ろうよ。」

「うん。」

「そしたら、またいっぱいキスしちゃお。」



悪戯っぽく微笑みながら囁く子犬は、もしかしたら計り知れないポテンシャルを秘めているのかもしれない。

遥希の気持ちを今と同じ熱量のまま繋ぎ止めておく自信はないけど、遥希を信じて、今よりもっと深く寄り添ってもいいのかな..........

屈託のない無垢な笑顔に癒されながら、その夜は、そんな風に思った。
< 127 / 243 >

この作品をシェア

pagetop