気まぐれな君も好きだから
拗ねてみたつもりが、言い包められている。

俊のこういう大人っぽい思いやりには、やっぱり勝てない。

でも俊がいくらそう思ってくれたところでこのショックはすぐには消えないし、じゃあ一体、私はこれからどうすれば良いというのだろう。

正式発表が出ないことには何の方向性も見えて来ないし、急に不安な気持ちが募り始める。



「でさ、明日、横浜から下にある店中心に、車で細かく回ろうと思ってるんだけど、帰り、迎えに行くから一緒に帰ろうよ。」

「うん。」

「このことについても、これからのことについても、そろそろ歩未ときちんと話しておきたいし。」

「うん.......ん? これから?」

「いや、うん、前から考えてたことなんだけど........。」



これから? そろそろ?

それって、もしかして、もしかする?

どさくさに紛れて、急にそんなこと言われても、頭も気持ちも追いつかない。

なのに、そのタイミングがついに来ちゃうのかな..........



「これをキッカケにするのはズルいかもしれないけど、俺も30になったし、歩未が仕事とどう向き合って行きたいのかを含めて、将来について話し合う時期が来たのかなって思って。」

「.......そうだね。」

「いいタイミングだし、歩未も考えてみてよ。」

「うん.......。」
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