気まぐれな君も好きだから
俊にもまだ全部を話したことはない。

付き合い始めの頃、それを話すキッカケが掴めなくなるような出来事があったから。



どういう流れでそうなったのかは忘れてしまったけど、何かの拍子に、俊の前で思わず父の悪口を言ってしまったことがあった。

少しキツい言い方をしてしまい、立派なお父さんのいる俊には、それが腹立たしく感じられたんだろう。

「そんなのよくないよ」って険しい顔であしらわれたら、どうして私がそこまで父を嫌うのか、とてもじゃないけど、理由を話す気にはなれなかった。

それ以来、多分、俊の前で父の話をしたことは一度もなかったと思う。



長い人生を考えたら、全てを割り切り、古谷君や遥希への思いを封印して、俊と結婚するという選択肢も「アリ」なんだろう。

俊なら、いわゆる理想的な旦那サマになれそうだ。

そうすれば私だって、俊のお母さんみたいな世間のイメージする「幸せそうな奥様」になれるのかもしれない。



俊がどこまで私のことを理解してくれているのかは、正直、よくわからない。

完璧な彼氏に相応しい彼女でいようとして頑張っちゃってた部分もあるから、俊の好きな私は、もしかしたら本当の私じゃない可能性だってあるし。
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