気まぐれな君も好きだから
「こういうのってタイミングなんじゃないかな。田本さん、自分の部門が無くなってくれたおかげで、何のためらいも無く辞められるって笑ってたよ。自分の年齢を考えたら、出産のこととかも不安だったし、これで良かったんじゃないかなって。」

「そうなんだ......。」

「歩未は、そういうこと考えたりしないの?」

「全くしないって訳じゃないけど、まだ漠然としか考えたことないかも。」

「じゃあ、そろそろ考えてよ。」

「..........。」

「田本さんじゃないけど、何かキッカケが無いと、こういうことって考えないでしょ。」

「そうだけど、私はまだ当分結婚するつもりは無いし、仕事だってこんな中途半端な状態で辞めたくない。」

「そう、なの?」

「うん。」

「.......でもさ、本当にそろそろ前向きに考えてみない?」

「何を?」

「俺との結婚。」

「..........。」

「もちろん今すぐ結婚してくれとは言わないよ。でも俺は歩未と一緒になりたいって、今までもずっと思ってたし、その気になってくれたらいつでも正式にプロポーズするつもりでいる。」

「..........。」

「歩未が頑張って来た部門が無くなるのは残念だけど、俺にとっても歩未にとっても、これって良いキッカケなんじゃないかな。」

「そうかもしれないけど.......。」
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