気まぐれな君も好きだから
ハル君も、車で通勤した日は、必ず私を送ってくれた。

いいって言ってるのに、家の前まで。

うちの店で家が一番遠いのは、多分、埼玉県に近い私で、ハル君の家の場所はハッキリ知らないけど、かなり都心。

次の日も朝早いだろうし、ただでさえ私の仕事が終わるまで待ってもらってるのに、川崎にある店から東京を縦断してまで送られるのは、何だか気がひける。

だけど.........



「俺が送りたいんだから、いいの。ちょっとでも長い時間、一緒にいたいから。」



決まって、ハル君はそう言う。

距離を置こうと思ったのに、これじゃ無理。

回を重ねる毎に近付いて、お互いの存在は、どんどん大きくなって行く。



途中まで他の人が乗っていることだってあるし、無下に断ればハル君を傷つけることになる。

そう思うと、なかなか断る勇気も持てなくて..........



気付けば、私の中にも、もっと一緒にいたいと思う気持ちが芽生えていて、心のどこかで、ハル君の誘いを待つようになってしまっていた。
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