気まぐれな君も好きだから
次の日、出勤すると私宛に社内メール便が届いていた。

差出人は一期上の女性の先輩。

開封してみると、田本さんの送別会の案内状だった。



うちの会社では、大卒女性社員は毎年4、5人しか採用されない。

私の同期だって大卒100人のうち、女子はたったの4人。

二人はホビーやファンシー雑貨の部門に配属され、私ともう一人が衣料品だったけど、その子は入社2年目くらいでデキ婚退社してしまって、もういない。



そんな少数派だからこそ、年齢や店舗の場所に関係なく、同じ部門の女子同志は非常に仲が良い。

仕事に対する悩みや不満も同じだし、専門性を持った職種を受け持つだけに研修も多いから、会えばすぐに話に華が咲くし、立場の不安定な者同志、お互いの存在が支えになっていると言っても過言ではない。



その仲間達が憧れ、目標にして来た田本さんがいなくなってしまう。

寂しいし、これから私達は誰を頼れば良いんだろうと不安になる。



ある程度の年齢になればほとんどの先輩が寿退社してしまう部門だけに、私もこの中では上から数えた方が早くなってしまったけど、田本さんにはお世話になりっぱなしだったし、最後まで可愛がってもらっていた。

だからもちろん送別会には参加するつもりだし、あんなに熱心に仕事をしていた田本さんが辞める決心をした経緯を聞いてみたい。

それが、何か今の自分へのヒントになるような気がする。
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