気まぐれな君も好きだから
って、古谷君と私を置いてけぼりにして、田本さんが俊の同期の先輩と盛り上がり始める。

悪い気はしないけど、俊がそういう風に見られてるっていうのは意外で、ちょっと驚いた。

言われて古谷君もまんざらでは無さそうだから、何となくくすぐったい気にもなるし.........

やっぱり嬉しい。

誰にも言えないけど、古谷君と気持ちが向かい合っているのがわかる。




参加メンバーの大半は20代の女子だから、お酒が入れば、とにかくみんな元気に喋りまくる。

普段からテンションの高い田本さんの送別会だから、余計にそうなるのかもしれないけど。



「田本さ〜ん、どうして辞めちゃうんですかぁ? 結婚しても、お腹が大きくなるまでは働けますよねぇ?」



みんなが一番聞きたかったことを、早くも呂律が回らなくなった入社三年目の奈美ゃんが聞く。

三年目と言えば、ちょうど女子社員の扱いに疑問が湧いて来る頃だ。

田本さんに、是非ともこれを聞きたかったに違いない。



「そうだな、もう十分頑張ったから、そろそろいいかなぁって。やり切った感あるし、今から店に戻されても、年齢的にも立場的にも、どう振る舞ったらいいかわかんないしね。」

「うん、わかる〜!」

「結婚、出産のタイミングをどうするかも正直、迷ってたから、いい区切りになったと思ってる。あっさり仕事に諦めがつけられて良かったよ。」
< 166 / 243 >

この作品をシェア

pagetop