気まぐれな君も好きだから
古谷君は私の頭をポンポンすると、そのまま手を肩の方へ滑らせ、抱き寄せた。

何にもしないって言われてるのに、聞こえちゃわないか心配になるくらい心臓がバクバクと音を立て始める。



「あのさ、さっきの話なんだけど.......。」

「うん。」

「俺さ、お前が沢井さんと付き合い始める前から、お前のこと、多分好きだった。まぁ、言うか言わないか迷って、グズグズしてるうちに沢井さんに盗られちゃった訳だけど、それでもこんなに長い間、友達以上恋人未満みたいな関係でいられたのって、気持ちをハッキリ口に出してなかったからっていうのもあるじゃん?」

「うん.......。」

「でもいつまでもこのままじゃいられないだろうし、沢井さんも俺らの関係って普通じゃないって思ってるみたいだし、何より俺がキツくなっちゃってさ。片思いみたいな両思いが辛くて、何回も好きだって言っちゃおうとした。」

「..........。」

「だけど言ってもどうにもならないんだよな。もっと言えば、お前の方から好きだって言ってくれてもダメじゃん? 沢井さんの彼女に手を出したとか、沢井さんの彼女が裏切ったとか、結局そういうことになって沢井さんのプライドを傷つける。それは絶対にできない。」

「.....そうだね。」
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