気まぐれな君も好きだから
「沢井さんがお前のこと嫌いになって、手放してくれればいいのにって何度も思ったけど、それは絶対無さそうだし、お前が沢井さんのこと、どのくらい好きなのかもわからないから、どこまでが許される範囲なのか悩みながら誘ったり、お前の気持ち探るようなことしたり、俺って情けねぇなとか思いながら彷徨ってた。」

「.....全然、そんな風に見えなかったよ。」

「当たり前じゃん。そんなん見せるかよ。」

「ごめん。」

「謝んなよ。お前もちょっとは悩んでくれてたんだろ?」

「うん.....。」

「でもさ、これじゃ何も状況変わんないし、ずっとこのままでいられる訳ないじゃん? だから逃げようとしたんだ、俺。」

「..........。」

「前の店で一緒だった子に何回も何回もアタックされててさ、最初は断ってたんだけど、その子、超本気で、告白するために彼氏と別れて来たとか言うんだ。真紀さんが言うように強気なところもあるけど、仕事に一生懸命だったり、案外天然なところがあったり、お前に似てるところもあるから、もしかしたら好きになれるかもしれないと思って付き合ってみたんだけど.....。」

「..........。」

「好きな人がいるのに、別の人を好きになろうとするって難しい。もう半年くらいになるけど、今は店も違うし、あんまり会ってないし、その子とはこんなことしたことがない。」

「うそ?」

「嘘じゃねぇよ。お前のこと忘れるくらい好きになれたらいいなと思って付き合い始めたけど、一緒にいて、あぁ、違うな、やっぱり無理なんだなってすぐわかっちゃった。だから付き合ってるって言っても、それこそ名義だけみたいな?」

「ふ~ん.....。」
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