気まぐれな君も好きだから
異動が発表されてからの数日間は何だかすれ違ってばっかりで、遥希とゆっくり話をする機会がなかった。

しばらく私は精神的にいっぱいいいっぱいだったし、異動の引継ぎやら何やらで、遥希も結構忙しい。

こんな風に古谷君のことに気を取られすぎてボケっとしてたら、遥希はいなくなっちゃう.........

とは思うけど、そんな簡単に吹っ切れることではないし、遥希と毎日会えなくなること自体も寂しくてたまらない。

どうにも整理し切れない混乱する気持ちで、頭がパンクしそうになる。



少しでもいいから今日は遥希と話す時間が取れるといいな.....と思いながら通勤電車に乗ると、LINEが届いていた。



『おはよう(^0^)今日は休みなんだけど、異動先に挨拶に行って来るね。歩未とゆっくり話したいから、帰りに迎えに行ってもいい?』



遥希も同じこと考えてたんだ。

良かった。 嬉しい。

「もちろんいいよ」って返事を返して、胸を撫で下ろす。



私には、もう古谷君はいない。

苦しい時、悩んだ時、慰めて欲しい時、安心して飛び込める胸は一つだけ。

いなくなっちゃうと思うから、余計にそう思うのかな。

自分でおかしくなっちゃうくらい、俊の存在が頭の中から抜け落ちてる。



プロポーズっていう切り札をこんなに軽く受け取られているなんて、俊は思ってもみないだろう。

でもこれが現実。

古谷君に自ら抱かれ、遥希を心から気付かう。

それでいて平気でいられるなんて、随分と図太くなったものだ。
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