気まぐれな君も好きだから
それを眺めながら衣料品のパートさん達と静かに飲んでいると、高瀬さんがグラスを持ってやって来た。

ハル君の一人立ちが嬉しいのか、結構飲んでるみたいだし、ニコニコして楽しそうだ。



「歩未ちゃん、ハル君がいなくなっちゃったら寂しい?」

「もちろん。」

「そうよねぇ。ハル君も寂しくて寂しくてたまらないみたいだからねぇ。」

「高瀬さんもでしょ?」

「そりゃそうよ。大事な息子だもん。」

「あはは.....そうだよね。」

「最初に会った日に、高瀬と片瀬って似てますよねぇ、とか言っちゃってすごく可愛い顔で笑ったの、今でも思い出す。いっぱい失敗もしたけど、頑張り屋さんだし、よくぞここまで育った。」

「高瀬さんが育てたみたいなもんだもんね。」

「あの子は本当に優しい子なの。腰が痛いって言えば、黙ってても牛乳とかお豆腐とか、重いの下ろして台車に乗せといてくれるし、手荒れが酷いって言えば、バックヤードにハンドクリーム置いておいてくれたりするの。あとね、こんなおばちゃん達のお誕生日も全部覚えててちょっとしたプレゼントくれたりね、気が利いて、思いやりがあって、本当にイイ子なの。」

「べた褒めだね。」

「歩未ちゃんくらい若かったら、付き合いたいくらい。」

「あはは.....そんなに好き?」

「うん。お坊ちゃん育ちだけど、相当苦労して来たみたいだから、いろいろ気が付くんだろうね。」

「え?..... そう、なの?」
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