気まぐれな君も好きだから
慣れない大邸宅にビクビクしながらも、勇気を出して、聞きたかったことの一つを聞いてみる。


「遥希のお家、和菓子屋さんって言ってたよね? お店も近くにあるの?」

「う~ん、近くにもあるけど、あちこちにある。」

「えっ? そんなにいっぱいあるの?」

「うん。路面店は少ないけど、デパ地下とか、駅中とか、空港とか、いろいろ。」

「うそ? ちょっと何? え、和菓子屋さんっていうか、それって会社? メーカー?」

「製造販売かな?『渚屋』って知ってる?」

「えっ!『渚屋』? 知ってるに決まってんじゃん!ホント?」

「うん。うちがその『渚屋』。」

「.....うそぉ、全然知らなかった。」



超有名な和菓子メーカーの名前が出てきて、驚かない方がおかしいと思う。

『渚屋』って言ったら、ご進物やお土産の定番として誰もが知っているブランドだ。

遥希はそこの息子だったの?

何か騙されたみたいな気分。



「言った方が良かった? だって知ってても知らなくても、さして影響ないでしょ? 」

「うん、まぁ、遥希は遥希だから、どこのお家の子でも関係ないけど、ちょっと驚いちゃった。」

「今の言葉、何気に超嬉しいんだけど。」

「へ? 今の言葉? 私、何かそんなにイイこと言った?」

「うん。歩未のそういうところ、大好き。」
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