気まぐれな君も好きだから
遥希が私の髪を搔き上げ、そのまま頭を抱え込んで丁寧にキスする。

唇が一度触れただけで、もうカラダ中が火照り始めている。



車の中で一回拒否しちゃったから、遥希はまだ私がカラダを許す気はないと思ってるのかな。

あの時はまだ遥希をどこまで受け入れるか迷っていて、いつかはこうなると思いながら、決断する勇気がなかった。



でも今は違う。

一番大切なのは遥希だと思うし、そう思うから遥希が望むなら何でもしてあげたい。

私も、遥希に抱いてもらいたい。



古谷君に抱かれた日、痛いほどわかった。

せっかく好きな人に「好き」って言ってもらえても、それだけじゃ思いは宙に浮いたままだ。

行き場のない「好き」は、叶うこともなく、切なさを募らせて行くだけ。

気持ちは繋がっているのに、両思いのはずなのに、そこから先へ進めない「好き」は、思いを深め、益々胸を締め付けるだけだ。



だから、諦めるために区切りが必要だった。

思いはちゃんと通じたんだっていう、お互いに納得の行く証が。

愛してる人に愛してもらえた、最高に幸せな思い出が。



後悔なんてもちろんないし、これで良かったんだと思う。

古谷君に抱かれて、叶わない「好き」を昇華させ、気持ちにきちんと区切りをつけることができた。

そして行く当てのない思いを引きずることなく、残したままにもしないで済んだから。
< 205 / 243 >

この作品をシェア

pagetop