気まぐれな君も好きだから
遥希の首に絡めていた腕で、そのまま力いっぱい抱きしめた。

勝手に涙が溢れて来て、どうすることもできなかった。

家族の話を親身に聞いてもらっただけでも、随分と気持ちが楽になったのに、そんな言葉をかけてもらえるなんて思いも寄らなかった。



五つも年下のくせして、どうしていつもこうなの?

ひねくれたアラサー女を、こんなに簡単に素直にしちゃうなんて。

こんなんじゃ、私、遥希がいなくちゃ生きていけなくなっちゃうじゃん.......



だけど遥希がこんな風に育ったのは、やっぱり何か特別な理由があるからなのかな。

それが高瀬さんの言ってたことに関係してる?

今なら聞けば教えてくれそうな気がする。

遥希が背負っているものが何なのか、少しでもいいから知りたい。



「.....遥希のご両親は、仲良いの?」

「うん、仲良いよ。仕事上でも信頼し合ってるみたいだし、ある意味理想の夫婦なんじゃない?」

「ふ~ん、羨ましいな。」

「結婚するまでも、してからも、二人でかなり苦労してるからね。」

「そうなの?」

「うちのお母さん、後妻なんだけど、病気で死んじゃった前の奥さんより10個も年下なの。」

「.........。」

「それだけでも大変そうでしょ?」

「うん.....。」

「じゃあ、俺も話しちゃおうかな。相手が歩未だし。」

「..........。」
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