気まぐれな君も好きだから
生まれながらにそんなポジションだなんて、あまりにも不憫過ぎる。

遥希は私なんかに想像もつかないような苦労を、たくさんたくさん重ねて来たに違いない。



なのにこんなに素直で優しい、心がきれいな男の子になったのは、お父さん、お母さん、それからお婆ちゃんが一生懸命、遥希を守ってくれたからなんだろう。

守ってくれる人達が大きな愛情をくれたから、人を思いやったり、優しく包んだり、労わったりすることの大切さを、遥希は自然に感じて育ったんじゃないかな。



「俺に好きなことをやっていいってお父さんが言ってくれたのは、そういう訳なんだ。無理にそういうしがらみの中に入って苦労するより、外でいろんなこと経験して来いってことだと思う。それでさ、普段、ギスギスした親戚とかいっぱい見てるから、気持ちがリラックスできそうな温かいイメージの所がいいなって思って、お婆ちゃんとの思い出がいっぱいあるスーパーを選んだんだけど、ハッピーマートに入ってなかったら歩未に会えなかったよね?」

「うん。」

「だからこれでいいんだ。子供の頃は周りの顔色ばっかり伺ってた時期もあったけど、大人になってからは割り切ればいいことなんだって、だいぶ吹っ切れたし、今は好きなようにやらせてもらってるから幸せだよ。」

「ほんとに?」

「うん。だって仕事は楽しいし、周りの人もイイ人ばっかりだし、何よりこうして俺の腕の中に歩未がいてくれる。 これ以上のことなんて、何も望まない。」

「.....うん、そうだね。」
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