気まぐれな君も好きだから
* それぞれの道
< それぞれの道 >
二週間ぶりに顔を合わす俊の話は、意外なものだった。
プロポーズの返事を急かすのではなく、歩み寄り?
俊の切り札であるプロポーズに興味を示さない私を、別の方法で説得しようとしているのが読み取れる、ある意味、力技のような提案だ。
「大きな異動も来週出る第三弾でだいたい治まるらしいんだ。そうすれば、仕事も若干落ち着くから、思い切って家を出ようと思う。」
「え? それって 一人暮らし始めるっていうこと?」
「そう。そうすれば、多少忙しくても、夜、会いに来てもらったりできるだろ?」
「うん.......。」
「もちろんカギは渡すから、好きな時に来てほしい。」
「..........。」
「一緒にご飯作って食べたり、テレビ見ながらゴロゴロしたりしてたら、自然と二人で暮らしてるイメージも湧くんじゃないかな?」
「そうかもね。」
「実はさ、けっこう前から、そろそろ自立しようって思ってたんだけど、忙しいし、なかなか重い腰をあげられなくてさ。でも、俺ももう30だし、歩未との将来のことも考えたいから、思い切ってこのタイミングで一人暮らし始めるのが、正解なんじゃないかな。」
「うん。そうだね。」