気まぐれな君も好きだから
「実はさ、もう目星をつけてある部屋がいくつかあるんだ。今日、後で見に行かない? 歩未の意見も聞きたいし。」

「うん、いいよ。」

「ありがとう。何かすっごい楽しみになって来たなぁ。」

「いいのがあると良いね。」

「うん。」



俊の嬉しそうな顔を見ていると、益々どう切り出せばいいいのかわからなくなる。

いきなりそんな話をしたら、俊は何て言うのかな。



そもそもよく考えてみたら、俊が一人暮らしを始めるのは、多分、私と古谷君との仲を疑っているせいもある。

自分の部屋に私を縛りつけておけば、行動を怪しむことなく、安心できるだろうから。



この前も「結婚しよう」じゃなくて、「結婚を考えている」「その気になってくれたら、いつでもプロポーズする」なのが、何となく引っかかった。

それも私のせいなんだろうけど、俊は私を100%信用していないような気がする。



ランチを済ませた後、雑貨屋さんを少し見て、夕方になる前に不動産屋さんに行った。

何にも説明していないのに不動産屋さんは私を勝手に「彼女さん」と位置付け、「もっと広いお部屋にしなくていいんですか」「ご一緒に御住みにならないんですか」なんて言う。

言われた俊は嬉しそうにいちいち私の顔を覗き込むから笑顔を作るけど、だんだん憂鬱な気持ちになって来る。

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