気まぐれな君も好きだから
不動産屋さんの車で三か所の物件を周ったけど、確かに一人暮らしをするならどれも悪くはない。

みんな同じような作りで最寄駅も同じだし、違うのは立地と家賃くらい?

だったら住むのも、決めるのも俊なんだから、わざわざ私を連れて来なくてもいいのに。


そう思っちゃうのは、私が早く俊から離れなくちゃと思ってるからなのかな。

俊は、いつ頃、家を出るつもりだろう。

この件に関しては深入りし過ぎると、良くない気がする。

益々、別れを切り出せなくなりそうだ。



手遅れにならないうちに何とかしなくちゃ..........

車の窓から景色を眺め、ボ~っとしながら、何度かため息をついていた。

気を抜いていたら、信号で車で停まって、俊の手が私の手を握った。



「疲れてる?」

「えっ?」

「今日の歩未、ずっとボ~っとしてるし、何となくテンション低いから。」

「そう?」

「体調良くないの?」

「ううん、ごめん。大丈夫だよ。」

「なら、いいんだけど。」



何とか作り笑顔を返すと、俊の顔が近付いて来て、軽く唇が触れた。

すぐに信号が変わり、俊はパっと離れて再び車を発進させる。



「突然一人暮らしするなんて言って驚かせたかもしれないけど、俺はただ単に、歩未と少しでも長い時間一緒にいたいんだ。」

「..........。」

「一緒にいれば、もっとお互い分かり合えるかもしれない。」

「え?.......。」

「歩未も楽しみにしててよ。」

「うん.......。」
< 220 / 243 >

この作品をシェア

pagetop