気まぐれな君も好きだから
足早に階段を上って来る音が聞こえる。

慌てて遥希が、私からパッと手を離す。

でも間に合わなくて、かなり近い位置にいるままだから、上って来た仁科君に、ここぞとばかり、速攻でつっこまれる。



「あっ、お前、何してんだよ! 」

「えっ、いや、あ......。」

「ケーキ全部売れたからって、いい気になって、早速、歩未さんに甘えてんのかよ。」

「うるせー! ちげーよ。」



うわぁ、始まった.......

この同期コンビって、やっぱり最強だ。

二人の愛のある絶妙な掛け合いを見ていると、何だか可愛くて、ついつい笑顔になってしまう。



若いってイイなぁ.......なんて思いながらホッコリしていると、仁科君に少し遅れて、鮮魚の大石マネージャーがゆっくり階段を上がって来た。



「仁科ぁ、予算行った?」

「あ、はい。今、見ます。」



POSを操作し、仁科くんが、今現在の全部門の売り上げが一覧になっているページを開く。

遥希とピッタリ肩を寄せ、二人並んでパソコンの画面を覗き込んでいる様子は、一つの玩具で遊んでる子供みたい。

笑っちゃいそうになっていると、大石さんが私に向け、思いがけない言葉を放った。
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