気まぐれな君も好きだから
元気のない笑顔。

言葉を飲み込んでるのがわかる。

誰もいなかったら、今すぐ抱きしめてあげたいなんて思ってしまう。



遥希はあれから今日まで、私の前で悲しい顔を見せなかった。

いつも通りに微笑んで、甘くて心地良い時間をくれた。

我慢してるのがバレバレなのに、平気なフリをして頑張ってた。



原因は私なんだから、可哀相って思うのは矛盾していると思う。

でも遥希の一途さ、健気さが愛しくて、どうしても切ない気持ちになってしまう。



少しの沈黙の後、立ち上がって、印刷が終わったレポートを切り取った。

その束を左手で抱え、右手を遥希の肩に置き、そのまま顔を近付け、耳元で囁いた。



「今度、デートしようか。」



遥希は驚いた顔を見せたけど、ゆっくり柔らかに微笑んで、嬉しそうに答えた。



「うんっ!」



去り際に、目を合わせて微笑み合う。

これでもう大丈夫。

遥希の気持ちは遠くに行かない。

私は癒しを失くさない。



だけど、俊がすぐそこにいるのに、こんなことができちゃうなんて、自分で自分が怖くなる。

もう罪の意識を少しも感じないのは、どうしてなんだろう..........

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