気まぐれな君も好きだから
その後もチラチラとこっちを伺うから、何度か目は合ったけど、もう座敷を使える時間もあまり残ってなくて、結局、最後まで古谷君がこっちに来ることはなかった。

残念なような、ホッとするような変な気分。

ドキドキした分、安堵感も大きいけど。



でもお開きの時間になって、店の外に出ると、さすがに古谷君が俊に挨拶しに来た。

そうしたら、酔っていたのもあるんだろうけど...........

二次会の場所を伝える古谷君の前で、俊は横側から私の腰に片手を回し、頭と頭を軽くコツンとくっつけて見せた。



嘘でしょ? わざと?

驚きで一気に酔いが醒める。

古谷君も一瞬、無表情になったけど、空気を読み、すぐに笑ってツッコミを入れる。



「あ〜、いいなぁ。何かラブラブじゃないですか〜!」



俊は満足そうに笑顔を浮かべているものの、その声に反応して他の人達が振り向いた時には、もう手を離し始めていた。



今のは何?

さりげなく宣戦布告?

古谷君に「近付くな」って言ってるつもりなのかな。

私にも、これ以上そっちを向くなって..........
< 44 / 243 >

この作品をシェア

pagetop