気まぐれな君も好きだから
でもだから悩む。

古谷君はいつもこんな風に思わせぶりな態度ばかり、私に見せるから。

出会ってから六年も立つのに、一緒にいると、胸が苦しいくらいキュンとしてしまうことがあるから........



待ち合わせは品川駅のホームだった。

一番前の車両に乗って、窓の外を覗いていると、ホームに古谷君の姿がある。

小さく手を振ると、ちょっとだけニコッとして、すぐに古谷君が近付いて来た。

そして扉が開くと同時に、降りようとする私の手を無造作に掴んで、そのまま電車に乗り込んだ。



え、ちょっと、何?

この展開?

そうやっていつも自分のペースでドキドキさせるから、古谷君はズルい。

反対側の窓の前まで進み、混雑している車両の端っこに陣取ると、古谷君は手を離して、子供みたいに得意げな笑顔を見せた。



「ねぇ、どこ行くの?」

「内緒。」

「.........。」

「そんな顔すんなよ。奢ってやるから。」

「わ、ほんと?」

「うん。店の奴と競馬行ったら、けっこうな大穴当たったから、一緒に美味しいものでも食べようかなぁと思って。」

「へぇ、すごいじゃん。どの位?」

「それは聞くなよ。」

「え、だって普通聞くでしょ?」

「そう?」
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