気まぐれな君も好きだから
相変わらずのマイペース。

ちょっぴり意地悪で、俺様。

でももちろん悪意がある訳じゃないし、何だかんだ言って、私は古谷君にこうして構われるのが、嬉しくてたまらない。



「まぁ、いいや。誘ってくれて、ありがとう。」

「うん。」

「何、奢ってくれるの?」

「お寿司とかどう?」

「回らない奴?」

「ははは........当然だろ。お前、バカにしてんの?」



何でもない会話なのに、胸が弾む。

六年前から変わらない、古谷君といる時だけに感じるこの感情は何なんだろう。

もう「トキメキ」というには新鮮さに欠けるような気もするけど、楽しくて、ドキドキして..........

やっぱり、好きなんだとは思う。



嬉しくて会話に夢中になっているうち、新橋くらいから、また電車が混み始めた。

東京駅では降りた人の倍くらいの人が乗り込んで来て、古谷君との距離が、否が応でもドンドン近付いて行く。

身体がくっつく距離まで近付き、何となく俯き加減になって、会話も次第に途切れ始めてしまう..........



すると不意に、古谷君の右手が私の背中に回された。

知らない人が見たら恋人にしか見えないくらい、とても自然に。

何でもない、当たり前のことみたいに。
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