気まぐれな君も好きだから
私の右肩を掴んで、ゆるく抱き寄せるような格好になる。

他の乗客から守ってくれてるみたいな感じは嬉しいけど、近過ぎるし、いきなりこんなことをされると思ってなかったから、心臓が暴れ出す。

古谷君の顔が、まともに見られなくなる。



なのに窓に映る古谷君の表情は涼しげで、緊張して微妙に強張ってる私を流し目で見下ろすと、今度はピッタリ自分の身体に密着するように抱き寄せる。

驚いている私を見て、頬をキュっと上げ、悪ガキみたいな薄ら笑いを浮かべる。

すっかり遊ばれているのに、憎めない。

悔しいけど、最後には私も笑顔になってしまう。



私達の仲の良さは、衣料品部門に所属する同期の内では、すっかり知れ渡っている。

俊とのことが広まるまでは、私と古谷君は付き合っていると、本気で思っていた仲間もいたくらいだ。



だからと言って、二人きりじゃなきゃ、流石に古谷君だってこんなことはしない。

でも二人だけの時は、とても自然に軽くやってのけるから、自分が古谷君にとって特別な女の子なんだって、ついつい勘違いしてしまいそうになる.........

< 84 / 243 >

この作品をシェア

pagetop