気まぐれな君も好きだから
そんな風にあんまり前向きじゃない気持ちで仕事をしていた私の前に、可愛い子犬が現れたのは、異動して間もなくだった。



普段、私が勤務しているのは主に二階。

たまに三階のシーズン催事コーナーを任されることもあっても、一階の食品フロアに足を運ぶことは、ほぼ無い。



一階で働く、いわゆる「フーズ」のメンバーと顔を合わすのは事務所と食堂くらいだから、いくらアットホームな店舗でも、なかなか顔も名前も憶えられない。

当然、 誰がどこの部門なのかもわからないから、しばらくは店内を歩くのにも、ちょっぴり緊張していた。



幸い、フーズにも同期や知り合いが、何人かはいた。

鮮魚の仁科君は新入社員の頃、同じ店舗にいたし、惣菜も青果もマネージャーは同期。

レジにも同じ店だった子がいたし、何よりここのパートさん達は、部門に関係なくフレンドリーに話しかけて来てくれる。

どこに行っても一人ぼっちになったり、疎外感を感じたりすることは無くて、三日もすると、すっかりリラックスして過ごせるようになった。
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