生意気なキミ
好きです~要side~
言ってしまった。よりにもよってこの人に。
「いや、今のは忘れてください」
俺が顔を上げて言うと、先輩はふにゃりと笑い俺を抱きしめた。
俺のほうが身長高いから抱きついた、が正解かもしれない。
「如月、先輩………」
初めて感じる先輩の体温は、肌寒い今の季節には暖かかった。
「泣いても、いいんだよ?」
不安だよね、心配だよねと俺の頭を撫でる。
「っ………」
そうだ、俺は不安だったんだ。
去年までいた稲葉先輩はもういないし、頼っていた如月先輩も今日でいなくなる。
「……俺が泣くはずないでしょう」
精一杯の強がりを見せようとするが、声は正直に震えている。
そんなカッコ悪いところ、この人には見せたくない。
……それなのに。
「我慢しなくていいんだよ」
そう言って俺から涙を出させようとする。
わかってない……。
「先輩は、何もわかってない」
「えっ?」
初めて先輩と瞳がぶつかる。
「如月先輩は何もわかってないですよ」
俺がどんな思いで送辞を読んだのか。
今、どんな思いであなたを見ているのか。
「男っていうのはね、好きな人の前ではカッコつけたいものなんですよ」
「え、そ、それって…………」
先輩の頬がだんだん赤く染まっていく。
俺は、
「先輩のことが好きです」
その言葉で先輩の瞳からは涙が流れた。