髪から始まる恋模様【SS集】
…カランカラン。
扉に取り付けられた鈴が鳴る。
店内に一歩足を踏み入れると
受付カウンターに立っていた
アシスタント2年目のアキオ君が
「…いらっしゃいませ。
カリン様…お待ちしておりました。」
極上の営業スマイルを浮かべて
私を迎え入れてくれた。
ここはお客様を下の名前で呼ぶお店。
会社以外でアキオ君のように
年下で若くて可愛い系の男性に
下の名前で呼ばれる事に
最初は慣れなかったけど
今は悪くないと思えてくる。
私は受付にバッグを預けると
「…本日は担当のキミコ店長が
急用で誠に申し訳ありませんでした。
店長からは
『本日割引価格を適用させて頂く。』
『後日謝罪の電話をさせて頂く。』
との伝言がありました。」
アキオ君が申し訳なさそうに
店長の代わりに謝ってくれていた。
「…あっ、別にいいんですよ。
急用は仕方ないですからね。」
バッグを預けた私は
両手を大きく左右に振った。