髪から始まる恋模様【SS集】
店内は時間が時間だからか
お客はもう誰もいなかった。
それにアキオ君以外に
スタイリストもアシスタントも
既に帰ってしまったのか静かで
スピーカーから流れているBGMだけが
存在感を強調していた。
「…あのね、アキオ君。」
私は気になる事を聞いてみた。
「…はい、何でしょう?」
一瞬首を傾げたけど
すぐに察したらしい彼は
「…あっ、すいません!!
大事な事申し遅れてました!!
本日の担当スタイリストでしたら
普段は本店の副店長をしています
……『タイチ』が担当致します。
もうすぐ参りますのでお待ち下さい。」
そう言った時
…えっ!?『タイチ』!?
私の肩がピクリと震えた。
その時
「…いらっしゃいませ。
お待たせして申し訳ありません。」
アキオ君とは違う別の主が
私のそばに駆け寄ってきた。
聞き覚えのある声に
その男性を見た瞬間
「….…!!」
……やっぱり…と、そう思った。