髪から始まる恋模様【SS集】

「…申し訳ありません、カリン様。」

シャンプー台から離れるアキオ君に

「…いいよ…アキオもお疲れさん。
気をつけて帰れよ…。」

タイチ君の優しい声と足音が代わりに

私がいるシャンプー台へと近づいた。

彼の香水の匂いが鼻を掠めて

懐かしさにドキッとした。


「…カリン様
申し訳ありませんでした。
失礼します。
タイチ副長失礼します。
よろしくお願いします!!」

アキオ君の足音が消えると

「…お待たせしているうえに
不手際続きで申し訳ありませんでした。
では、カリン様。
シャンプーさせて頂きます。」

タイチ君はそう言って

適温のシャワーのお湯を出すと

「…熱かったらおっしゃって下さい。」

と言いながら私の髪を洗い始めた。

…あっ。

私の髪に差し込まれる彼の指に

私の背中に何とも言えない

懐かしく甘い痺れが走った。
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