髪から始まる恋模様【SS集】

…ああ、懐かしい。


髪と地肌から伝わる

この指とこの力加減。


…気持ちいい。


私の頭は覚えてた。

もう4〜5年も前の事なのに

ついこの間の事のように

鮮明によみがえりそう。

「…力加減大丈夫ですか?」

タイチ君の声が聞こえる。

「…はい、気持ちいいです。」

素直な言葉が溢れると

「…ありがとうございます。」

優しい言葉がおりてきたと思ったら


「…ねぇ、カリンさん。
俺の事思い出してくれた?」


私の頭をシャンプーをする

彼からの突然の言葉に

「……えっ!?」

私の肩がピクリと震えた。

「…あっ、あの…。」

何て言っていいかわからない私に


「…やっぱり。
俺の事覚えていてくれたんだね。」


と、いきなり

顔に被せられていたタオルを取られ

「……ひゃっ!!」

いきなり視界が明るくなって

驚いた私に


「…久しぶりだね。
会いたかったよ…カリンさん。」


少し切なげに

私の顔を覗く彼の顔があった。





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