髪から始まる恋模様【SS集】
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「…ねえ、カリンさん。
どうして本店に来てくれなくなったの?
どうして2号店なワケ?」
「……。」
「…カリンさん言ってたよね?
本店の方がカリンさんの家から
近いから行きやすいって…。
なのになぜ
わざわざ地下鉄乗らなきゃいけない
しかも途中下車のこの2号店なワケ?」
もう誰もいなくなった店内だからか
『カリン様』から『カリンさん』に
呼び方が変わり
口調までもさっきとは違い
親しい人や知り合いに話すような
感じに変わったタイチ君は
私の頭と体を起こすと
タオルで優しく髪を拭いてくれた。
「……。」
段々ハッキリよみがえる
彼のその手つきが懐かしくて
胸の鼓動は増すばかりなのに
本当は凄く嬉しいのに
「…黙ってたらわかんないよ。
ねぇ、理由を教えてよ。」
と、尋ねてくる彼の質問には
「……その…あの。」
…なかなか答えられずにいた。