髪から始まる恋模様【SS集】

***

「…ねえ、カリンさん。
どうして本店に来てくれなくなったの?
どうして2号店なワケ?」

「……。」

「…カリンさん言ってたよね?
本店の方がカリンさんの家から
近いから行きやすいって…。
なのになぜ
わざわざ地下鉄乗らなきゃいけない
しかも途中下車のこの2号店なワケ?」


もう誰もいなくなった店内だからか

『カリン様』から『カリンさん』に

呼び方が変わり

口調までもさっきとは違い

親しい人や知り合いに話すような

感じに変わったタイチ君は

私の頭と体を起こすと

タオルで優しく髪を拭いてくれた。

「……。」

段々ハッキリよみがえる

彼のその手つきが懐かしくて

胸の鼓動は増すばかりなのに

本当は凄く嬉しいのに

「…黙ってたらわかんないよ。
ねぇ、理由を教えてよ。」

と、尋ねてくる彼の質問には

「……その…あの。」

…なかなか答えられずにいた。

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