淡雪の恋
あぁ………やっと、会えた。
息を切らしている春に、わたしはゆっくりと近づいていく。
もっと緊張すると思ってたのに……
自分でも驚くぐらいわたしは落ち着いていた。
それは多分、氷雪が中にいるから。
氷雪が、わたしに勇気をくれるから。
「春…」
目の前に立ち、少しわたしより高い春を見上げる。
綺麗な春の瞳にわたしが写っているのが見えた。
「淡雪…大丈夫なのか。お前、」
ふわり
わたしは春の言葉を遮るように、春に抱きついた。
「春……春っ………」
首に回した腕に力を込める。
ずっと、こうやって触れたかった……
春を近くに感じたかった。
温もりを、知りたかった。
「っ、淡雪!?何して」
「春、お願い……何も言わないで、このまま聞いて」
そう囁くと春は何かを感じたのかピタリと動きを止めた。
「わたしは、冬の季節にしか生きることができない。
雪が降るころに生まれて春が来たら消える。
それがわたしたちの運命。
春と出会うまでそれが当たり前なんだって、普通なんだって…そう思ってた」
春の体温と日差しでだんだんと体が熱くなっていく。
「でもね、春と出会って、わたし、春と生きたいって思ったの。
春も夏も秋も冬も……ずっとずっと春と一緒にいたいって……そう思ったんだよ」
熱い……手も、足も、顔も……全てが熱くなって溶けていく。
完全に消えちゃう前に、わたしに全部伝えさせて……
わたしの気持ち、春に届けさせて……
「春が、わたしの運命の人だよ」
そう言った瞬間、わたしの体はぎゅっと抱きしめられた。
「淡雪っ……淡雪………っ!!」
あぁ……春を前よりずっと近くに感じるな。
残っていた力でわたしもぎゅうっと春を抱きしめる。