恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
あの日、誰もいない暗い職員室で抱きしめられて、想いが通じ合わせてから……、付き合ったりもしていないし、「好き」という意志の再確認もしていない。お互い〝ただの同僚〟という関係だったが、お互いが思っていることは自然と分かり合うことが出来ていた。
けれども、この日は、どうして古庄が自分を呼ぶのか分からなかった。
何か、急ぎの印刷物があって手伝ってほしいのだろうか?それにしては、さっきは余裕ありげに新聞を読んでいた……。
本当は自分の仕事がしたいところだったが、古庄から頼まれることは断れない。古庄のためなら、ほんの些細なことでも役に立ちたい…。
それは、真琴のいじらしい恋心だった。
とはいっても、現実は自分の仕事の方も切迫しているので、何とか早く古庄の方の用事を済ませてしまいたい。これも、真琴の本音だ。
「古庄先生。印刷物ですか?すぐ終わります?そういえば、昨日生徒会の子が、文化祭のエンディングのことで、古庄先生に相談したいことがあるって言ってましたよ」
前を歩く古庄の背中に、そんな風に声をかけながら、真琴は後を追いかけた。