恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
「男子はもう少し、頑張ってもらうけど、遅くなるって家に連絡を入れておけ」
男子たちは頷くと、一様に自分の携帯電話を取り出した。古庄は再び、短冊の貼り付け作業に戻る。そんな光景を横目に見ながら、真琴は他の教員たちと共に職員室へと戻った。
「……あれで、間に合うんでしょうか……?」
職員の昇降口で、理子がポツリと漏らした。真琴が靴から理子へと視線を移して口を開こうとした時、階段を平沢が降りてきた。
「お疲れ様でした」
本当に疲れた感じで、平沢が声をかけてくる。
「お疲れ様でした。平沢先生は特活部じゃないのに手伝ってくれて、本当に助かりました」
真琴がそう言って労うと、平沢も肩をすくめる。
「いえいえ、古庄先生がいるって知ってたら、もっと早く行ってたんですけど♡」
この言葉に、真琴は思わず絶句する。金曜日の夜、あれだけことをしておいて、堂々とこんなことを言える平沢の神経に恐れ入った。
それとも、平沢は酔っぱらっていたので、あの時のことはあまり覚えていないのかもしれない。いずれにしても、まだ古庄のことを諦めている感じではない。
理子の方は、極まりが悪いのだろう。何の反応も示さず、平沢の方から目を逸らして黙っている。それぞれの思惑を抱えながら、3人はそろって職員の駐車場まで歩いた。