恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜



「一宮先生、さっきの話だけど。間に合うとか、そういうことは問題じゃなくて。生徒に『やれるだけのことはやりつくした』って思わせることが大切なんじゃないかな?あれだけ頑張ってた生徒たちの中に、文化祭を後悔の思い出として残したくないじゃない」


 真面目な理子は、真琴の言葉を真摯に受け止めて、じっと真琴へ視線を投げかけた。


「でも、やっぱり。あれは全校生徒が手掛けている物だから、間に合わないで展示できないっていうのもマズくないですか?」


 横から口を出してきて、話の腰を折ったのは平沢だ。街灯の灯る通路を歩きながら、真琴は頷いて続けた。


「確かに、そのことは生徒自身も言ってた。期限内に何かを仕上げる…っていうのも、信頼を大事にしたり責任感を果たしたり、生徒にそういう感覚を育てるのにすごく大事よね。だけど、大丈夫。古庄先生はちゃんと間に合うようにやりとげるから。そうでしょ?」


 言葉の最後は、敢えて明るく真琴はそう言い放った。理子と平沢の目に映り、彼女たちが熱を上げている古庄は、ただ容姿が完璧すぎるだけの男ではないと、真琴は信じたかった。

 その反面、真琴が断言したので理子と平沢は面食らったようだった。作業をする現場を離れた時、モザイク画の修復の終わる見通しは少しも立たっておらず、何を根拠に真琴が確信しているのか見当もつかないようだ。



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