恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜





「それじゃ、お疲れ様でした」


 駐車場に着いて、3人はそれぞれ自分の車へと散っていった。
 真琴は2人の車が夜の深い影に消えて行ったあと、滑らせるように駐車場から車を出した。帰宅するのならば、右に曲がる。けれども、真琴は迷うことなく左のウインカーを出した。




 皆が帰ってしまって、教室内は一気に閑散としてしまった。残っているのは、男子生徒が六人ほどだ。
 この日までは、細かい作業の多いモザイク画はどちらかというと女子の実行委員が中心になってやっていたのだが、今ここにその女子はいない。

 誰も口には出さないが、「これだけの人数でやり遂げられるのか…」という不安を、誰もが抱えていた。というより、絶望感さえ漂い始める。

 
「ここで男を上げようぜ。明日の朝までに、これを校舎に吊るして、全校生徒を驚かせてやろうじゃないか」


 古庄がそう鼓舞すると、男子生徒たちは消極的な笑みを見せた。


――こんな状態では、本当に間に合わないかもしれない……。


 古庄は居ても立ってもいられなくなり、自分も油性ペンを取って色塗り作業を始めた。

 何としても完成させようと躍起になっているのは、自分だけかもしれない……。
 自分の個人的な感情に、生徒たちを巻き込んでいるだけかもしれない……。


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