恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
時間は刻一刻と過ぎていき、午後十時に差し掛かったころ、作業の途中で古庄が口を開いた。
「まだまだ終わりそうにないな。よし!遅くなったけど、ここで帰りたい者は帰っていいぞ。残る者は覚悟を決めて、今日は徹夜だ。家に連絡を入れておけ」
生徒たちは当然、帰る気はないらしい。おもむろに作業を止めて、携帯電話を求めて鞄のところへ向かった。そして、それぞれもう一度家へと連絡する。
五人の生徒たちはすぐに電話を切り、作業へと戻ってきたが、1人の生徒の親はなかなか納得してくれなかったようだ。様子をうかがっていた古庄がその生徒の肩を叩き、電話を代わってもらって教室を出た。するとすんなりと話が着いたらしく、すぐに教室へと戻ってきた。
「俺の母さん……。俺が相手だとぐちゃぐちゃ言ってたくせに、古庄先生が電話に出た途端、態度が豹変するんだから。いくら古庄先生がイケメンでも、あれはないと思うぜ」
言うまでもなく古庄は、生徒の母親の間でも人気が高い。古庄とお近づきになるために、我が子をラグビー部に入れようとするくらいだ。電話の対応をしてもらった男子が、肩をすくめながら他の男子に話すのを聞いて、真琴は唇に笑いをもらした。