恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
「……お前……。今度は落っことすなよ」
生徒の一人が、実行委員長に向かってポツリとつぶやく。
「もう、落とさねーよ!絶対に!!」
実行委員長は真っ赤な顔でムキになって、そう叫んだ。
「今度は落としても、下に書道部はいないから、大丈夫よ。破れるだけなら、すぐに修復できるわよ」
真琴が笑いながら言うと、生徒たちは必死になって声をそろえた。
「もう!勘弁してください!!」
それを聞いていた古庄も、声を立てて笑う。
「それじゃ、今度は慎重にいこう。運ぶ時も、気を付けるんだぞ」
一同は頷いて、巻き取ったモザイク画を全員で抱え、そろりそろりと教室を出て階段を上がった。
屋上に出ると、すでに東の空がうっすらと明るくなりつつあった。徐々に夜の闇が取り払われて、手元くらいは確認できる。
「どっちにしろ、この時間になって良かったな。暗い時には、この作業はできなかった」
屋上に置きっぱなしになっていた竹竿を、モザイク画の所定の場所に配置しながら、古庄が言った。
「そうですね。色塗り作業が終わって、明るくなるまで待ってたら、俺たち寝ちゃってたと思います」
「一旦寝たら即行熟睡だから、途中で起こされても、絶対に起きられないよな」