恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜



 しかし、印刷室に入っても、古庄は何をし始めるわけでもなく、真琴へと意味ありげな視線を投げかけている。
 この時ばかりは彼の意図がくみ取れなかった真琴は、思い切って切り出した。


「あの私、今日の1時間目の授業の準備をしてないから、急いで準備しないといけないんです。用があるなら手短にお願いします」


 真琴にそう言われて、古庄もうなずく。


「…わかった。じゃあ、手短に済まそう」


 と言って、胸のポケットに差してあった茶封筒の中から、一枚の紙を取り出して、印刷機の上に置いた。


「これに、必要事項を書いてもらえるかな?」



 真琴は印刷機に歩み寄り、それを覗き込む。

 ペラペラの紙に、焦茶色の印字……。

 
 
「……!!?」


 真琴は目を丸くして、古庄を見上げた。
 口を開けて何か言おうとしているが、パクパクするばかりで言葉にならない。




「……こっ、こっ、こっ、これっ!……こここ、こ、婚姻届じゃないですか!!」




 やっと反応を示した真琴を、古庄は愛おしそうにじっと見つめてから、ニッコリと笑いかけた。





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