恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
古庄の真剣な眼差しと言葉は、真琴の心を切なく震えさせる。その甘い痺れを感じながら、真琴はただ続きを待った。
「それ以来、俺にとってこの桜は、君そのものなんだ。……優し気で可憐で、それでいて凛々しくて……」
想いを言葉にしながら、古庄は声を詰まらせた。自分の中の想いが大きすぎて、それをどう表現すればいいのか分からない。
でも、今は言わねばならない。この絵の力を借りて、ずっと真琴に伝えたかったことを――。
「……だから、君のために……いや、寝ても覚めても君のことを想っている俺自身のために、どうしてもこの桜を絵にしたかったんだ。……そして、君にこの絵を見てもらいたかった」
その言葉を受けて、真琴は改めてモザイク画へと目を向けて、しっかりと見つめ直した。古庄の言葉が心に沁みて、再び涙が溢れてくる。
この絵から伝わってくる感動や、抱えきれないほどの古庄への想いを表現して応えたかったが、真琴は胸がいっぱいになって、何も言葉にはならなかった。
すると、古庄の方が再び口を開く。
「俺の個人的な願望のために、全校生徒を巻き込んでしまったし、君に見てもらう以前に、ずいぶん君に助けてもらった。きっと君がいなかったら、この絵は今日ここに掛かることはなかったよ……」
古庄もモザイク画を見ながら、肩をすくめて、恥ずかしそうに少し笑った。