恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
「俺は、君なしじゃ生きていけない。君がいなければ、俺が生きている意味なんてない」
自分の懐に向かって、古庄がそう語りかけると、真琴はその意味の深さに体を震わせた。
「……私は、そんな、あなたが想ってくれてるほどの女じゃありません……。平凡だし、何の取り柄もないし……」
真琴のその言葉に、古庄は柔らかく微笑む。
「君が素晴らしい人だということは、俺が誰よりも知ってるから。その君が君でいてくれさえすれば、俺の傍にいてくれさえすればいい。他には何もいらない。……だから、俺を君の一番近くに……」
そこまで言いかけて、古庄は真琴の両肩を掴んで、正面からしっかりと見つめ直した。
「だから、……結婚しよう」
すでに結婚はしているのに、敢えてプロポーズをしたその意味を探るように、真琴の視線が古庄の瞳を捉える。古庄はそれに応えるように、付け足した。
「あんな紙切れで、君を縛り付けるんじゃなくて、もっとちゃんと夫婦になろう」
古庄の言葉が体中に沁みわたって、真琴がうなずいた時、その目にたたえられていた涙が零れ落ちる。真琴を愛おしそうに見つめながら、古庄は真琴の頬を伝う涙を親指で拭った。