恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
「ニワトリみたいな賀川先生も可愛いなぁ…」
その古庄の得も言われぬ笑顔と、突飛な言動に、真琴は目の前の現実を一瞬忘れてしまう。
「…に、ニワトリ…?」
と、戸惑いながら眉を寄せて、言葉の意味を考える。そして、驚きのあまりどもってしまったことだと解って、真琴は顔を赤くした。
「いや、ニワトリは関係ないんだ。ごめん。急いでるんなら、そこに名前と住所、それに下に署名してくれたら、あとは俺がやるから。…ああ、ハンコもいるんだったな?出勤簿のハンコでいいよ。いつものところに置いてあるだろ?俺、取ってくるから、それ書いてて」
と、古庄は胸のポケットに差してあったポールペンを取り出して、婚姻届の隣に置いた。そして、軽快に印刷室を飛び出したかと思うと、真琴の机の所から真琴の印鑑を持って戻ってくる。
真琴は、その一連の動きをただ見つめるばかりだ。
「ん?書いた?」
古庄は、そう言いながら印鑑を渡してくれた。まるで、出張届けを書くかのような物言いに、真琴は何と言って答えたらいいか分からないどころか、開いた口が塞がらない。