恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
古庄のために何かできる…それだけで、真琴は体の芯から温かくなって動きだせる。ニッコリとした笑顔を古庄へと向けると、早速車へと歩き出した。
「……真琴!」
二、三歩行ったところで、古庄に呼び止められて振り返る。
「眠ってないから、車の運転、気を付けて」
そう言って、古庄は真琴を抱き寄せて、その額にまたキスをした。すると、真琴はくすぐったそうな素振りを見せ、満ち足りたように微笑んだ。
「大丈夫です。今ので、目が覚めました」
真琴は古庄の腕から抜け出すと、再び車の方へ向かい始める
隣の校舎の角を曲がる時、そこから遠く臨めるモザイク画を、真琴の目が視界の端で捉えた。
まばゆい朝の光の中、淡いピンクの色彩の前で、腰に手を当て、モザイク画を見上げている古庄の姿――。
――この桜は、君そのものなんだ……。
古庄の言葉が、真琴の胸に響き渡る。古庄に出逢った時から、真琴にとっても、この桜はとても大切なものだった。