恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
 
 
 
 
「……ん?」


 働きかけても真琴が無反応なので、古庄は腰をかがめて真琴を覗き込んだ。


「……!!」


 その端整な顔を間近に見てしまい、真琴の心臓が跳ね上がる。とっさに目を逸らして、手元にある婚姻届に視線を落とした。


 すでに、古庄の名前と住所、署名は書かれており、しっかりと捺印されている。丁寧に書かれたその字から、古庄の真剣な想いをくみ取って、真琴の胸がキュンと高鳴った。

 婚姻届を見つめたまま黙ってしまった真琴に、古庄が囁きかける。



「……今日で、1年経っただろ?この日を待ってたんだ……」



 真琴は顔をあげて、古庄を見つめた。
 1年前、想いを確認し合った夜のことを思い出した。

 親友の心を思いやって、1年間待つことにした約束を、古庄は律儀に守って待ってくれた。あれから、古庄は一度も「好きだ」と言ったり抱きしめたりはしてくれなかったが、その間ずっと想ってくれていた――。

 毎日会う古庄に、真琴がずっと心の中で想いを語りかけていたように……。





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