恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
 


 胸が切なく絞られて、真琴の瞳が潤んだ。そんな真琴の顔を、古庄も優しい表情で見つめ返す。しばし、甘いひと時が流れていく…。


 …けれども、古庄は肝心の目的は忘れていなかった。


「さあ!だから、これ、書いて!」


 その一言に、真琴も現実に引き戻されて、再び目が点になる。


「いや、でも。いきなりコレ?!まずは、普通に付き合ったりしてから……」


 婚姻届を出すということは、結婚するということだ。そんな大事なことを、こんなに簡単に決めてしまっていいはずがない。
 そもそも、一年前には『それからのことは、また考える』と言っていただけで、結婚する約束をしていたわけではなかった。


「普通に付き合った後は、結婚するんだろ?それとも、別れるのか?」


「わ、別れたりはしないけど……」


 古庄の危惧を、即座に真琴は否定した。側に古庄がいない生活なんて、もはや真琴には考えられなかった。


「だったら、今結婚しても結果は同じだろ?」


「そうだけど……」


 これに署名してしまう前に、いろいろと考えなければならないことがあるはずだ。結婚とは、そういうものだ。


「それに、俺はもうこれ以上待つのはイヤなんだ!」





 
 
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