恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
メモに気づいた真琴は、裏返して返事を書いている。
まるで授業中にこっそり手紙をやり取りしている生徒のような気がして、たったそれだけのことに古庄の胸はドキドキと鼓動を打った。
『今日は放課後、文化祭の準備で生徒を県立図書館まで連れて行くことになってて、帰りは何時になるか分かりません』
返ってきたつれない内容に、古庄の胸の高鳴りは一気に消沈する。けれども気を取り直して、再びメモを書いて渡す。
『明日の夜は、どう?』
明日は金曜日だ。もしかしたら、食事の後もそのまま一緒にいられるかもしれない…。
しかし、このメモを見て、真琴は申し訳ないような目で古庄に直接声をかけた。
「明日は、前々から女子会をしようって言ってるんです」
「女子会?」
「そうなんです。内輪の会ですけど、仲のいい女の先生同士で」
「そうか……」
真琴もこの高校に赴任して一年が経ち、同僚の中には親しい友人も出来ていた。
しかし、古庄の淡い期待もその友人たちに阻まれて、一気に打ち砕かれてしまった。肩を落として、ため息を吐く。
「それに、古庄先生だって、放課後は文化祭の準備で忙しいでしょう?クラスの方も、生徒会の方も」