恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜




 がっかりしている古庄に、真琴はそう言って、少し寂しく微笑んだ。それから、何か用事をするために席を立ち、職員室を出て行った。

 

 『しばらく今までのままで…』ということは、今まで通り、抱きしめたいのに我慢を強いられる…そんな生活を送らねばならないということだろうか。


 真琴の言ったことの意味を確かめて、古庄は欲求不満で爆発しそうになった。

 目を閉じ、きつく腕組みして、真琴を愛しく想う感情の荒ぶりが収まるのをただ待った。


 真琴を心置きなく抱きしめられるために…、真琴がどこへも逃げて行かないように…、結婚という形を選んだ。


 それなのに、真琴はあんな顔をして涙をも流し、自分の腕の中に止まろうとさえしてくれない。



――……こんなはずじゃなかった……。



 腕組みを解いて、気を紛らわせようと、脇に置いてあった新聞を開く。けれども、新聞のどんな記事も、古庄の目に映るばかりで頭には入ってこなかった。

 





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