恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
優しい同僚たちは、そうやって気遣ってくれる。
居心地のいいこの女子会が、真琴は本当に大好きだった。
「ううん、ホントに大丈夫。それより、このスズキのポワレ、美味しいね」
本当は味などまともに感じていなかったが、真琴は笑顔を作って話題を振った。
皆が今目の前にしている皿の上には、皮目をカリッと焼きあげられたスズキが載っている。
「ポワレって、こういう風に焼くことを言うの?ムニエルとはどう違うんだろ?」
「さあ?どっちもフランス語だけど、違いはわかんない」
「お店の人に訊いてみる?」
女子会のメンバーたちは、早速新しい話題に乗って、話に花を咲かせだした。
「ポワレは、脂をかけながらカリッと焼くことなんだけど、小麦粉とか粉をまぶして焼くとムニエルって言うんだよね」
「へえぇ~」
真琴は気を取り直して、そう説明した。
たまたま知っていただけなのに、一同から感心する声が上がる。
「さすがぁ、賀川さん。毎日お弁当を作ってくるだけあって、お料理については詳しいのね~」
「いや、お弁当はあんまり関係ないと思うけど…」
付け合せの焼かれたプチトマトを、フォークに刺して口に運びながら、真琴は肩をすくめた。