恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
 


 しかし、この五人の中で毎日お弁当を自分で作って出勤しているのは、真琴ぐらいのものだ。
 皆、私生活よりも仕事が大事!というような、バリバリ働いている女性。なかなか料理にまで手が回らないというのが実情らしい。


「でも、ホント、このレストラン。お料理は美味しいし、雰囲気も素敵だし。連れてきてもらえてよかったです。大人の女性になった気分になりました」


と言うのは、新卒2年目で今年の春に赴任してきた、一宮理子という英語の講師だ。

 小柄で可憐な少女を思わせるこの理子は、真琴もすごく可愛いと認めるところで、言うまでもなく男子生徒にとても人気があった。性格もいたって素直で、純粋培養の優等生がそのまま教師になった…という感じだ。
 ちなみに彼女は、自宅から母親が作ったお弁当を携えて通勤している。


「あら!もう大人の一宮ちゃんにそう言われると、私たちがすごくお局みたい」


 真琴よりも三つ年上の谷口という国語教師が、口を開いた。

 悲しいことに、女性も三十を過ぎた頃になると、年齢のことにはちょっと過敏になってしまう。仲は良くとも、歳若くて可愛い理子には、一抹の劣等感のようなものがあるのだ。


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