恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜

 

 真琴はそう考えて、話を切り出そうとした。その矢先、


「ま、この人たちの結婚のことはどうでもいいとして、一宮ちゃん。彼氏いるの?」


 理科教師の中山が、理子へとズバリ質問した。

 真琴は機会を逸して、喉元まで出てきていた言葉を引っ込め、口を閉ざして話の成り行きを見守ることになった。

 質問された理子は、目を丸くしてナイフとフォークを置く。


「…いや、あの。彼氏はいないんですけど……。」


と言いながら、その顔はみるみる間に真っ赤になった。


「いないのは、それでいいとして。『けど』って付くのが気になるね」


「さては、好きな人はいるなぁ?!」


「誰よ?誰よ?教えてよ!」



 理子はすっかり、お姉さま方のオモチャになっているようだ。
 再び助けを求めて、理子は真琴に視線を向けたが、今度は真琴も気の利いた言葉が出てこなかった。観念した理子が、恥ずかしそうに口を開く。


「……あの…好きな人は、古庄先生です……。ずいぶん年上なんですけど……」


 『古庄』という名前を聞いて、真琴の心臓が口から出てきそうなくらい飛び跳ねた。それと同時に仲間一同は、驚くよりも「あぁ……」というため息のような声を上げた。

 
< 39 / 122 >

この作品をシェア

pagetop